集合住宅でLANケーブルを各部屋へ新設する工事をしていたときの話です。
工事自体は特に問題なく進んでいました。
ところが午後、現場を離れて1時間ほど経ったところで作業メンバーから電話が入りました。
「共用の電源をショートさせてしまいました」
状況を聞くと、ALC壁へLANケーブルを通すために穴を開けたところ、ドリルを1cm程度入れたところで電線を損傷した可能性があるとのこと。
しかも穴あけ前にはウォールスキャナーを使用していましたが、反応は確認できなかったとのことでした。
1cm?
スキャナーも反応なし?
そんな浅いところに電線があるの?
いろいろな疑問を抱えながら現場へ戻りました。
今回は、実際のLAN配線工事中に起きた壁の穴あけで電線を損傷した事例と、原因確認から復旧までの流れを紹介します。
目次
集合住宅で各部屋へLANケーブルを新設する工事
今回の現場は集合住宅。
各部屋へLANケーブルを新しく引き込み、室内にLANコンセントを設置する工事でした。
通常であれば、MDF・IDFから既設配管を利用してLANケーブルを通す方法をまず考えます。
ところが今回の建物では、既設配管が細く、LANケーブルを追加で通せるだけの余裕がありませんでした。
無理に既設配管へ押し込むわけにもいきません。
そこで施工方法を変更しました。
ベランダ側から新しく配管することに
今回はベランダ側から新しく配管し、各部屋へLANケーブルを引き込む方法を採用しました。
工事の流れとしては、
ベランダ側へ新規配管
↓
各部屋の外壁へ新規穴あけ
↓
LANケーブルを室内へ入線
↓
室内へLANコンセントを設置
という内容です。
壁はALC。
穴あけする場所についても、何も確認せずにいきなりドリルを入れていたわけではありません。
ウォールスキャナーを使って壁内部の状況を確認してから穴あけを進めていました。
午前中は特に問題なし。
工事も順調に進んでいたため、午後になって自分は別の場所へ行くため、一度現場を離れました。
この時点では、本当にいつも通りの現場でした。
現場を離れて1時間後、作業メンバーから電話
現場を離れて1時間ほど経った頃。
作業メンバーから電話が入りました。
時間的にも、
「工事終わりました」
という連絡かなと思って電話に出ました。
ところが、電話の内容はまったく違いました。
「共用の電源をショートさせてしまいました」
……え?
詳しく状況を聞きます。
ALC壁にLANケーブルを通すため、新しく穴を開けようとした。
特に反応はなかった。
そこでドリルを当てたところ、
1cm程度入ったところでショートした。
正直、最初に聞いたときは、
「そんなバカな?」
と思いました。
「1cm?」「スキャナー反応なし?」疑問だらけ
まず引っ掛かったのが、
約1cmという浅さ。
そんな浅い位置に電線があるのか?
さらに、
ウォールスキャナーでも反応がなかった。
電話で話を聞いているだけでは状況が分かりません。
とにかく自分の目で確認する必要があるので、急いで現場へ戻りました。
まず何の電源をショートさせたのか確認
現場へ戻って最初に確認したのは、
「何の電源が止まっているのか?」
です。
集合住宅の共用電源です。
設備によっては、居住者にも影響します。
まずは影響範囲を特定する必要があります。
一つずつ確認しました。
ポンプは?
動いている。
ネットワーク関係の機器は?
動いている。
オートロックは?
動いている。
では、何が止まっている?
共用廊下へ行って照明を確認します。
……つかない。
ここで、
「これだな」
となりました。
共用廊下照明に関係する電源を損傷させた可能性が高いことが分かりました。
勝手に壁を壊さず、元請けとオーナーへ状況を説明
原因を確認するには、穴を開けた部分の壁内部を見る必要があります。
ただし、こちらの判断だけで勝手に壁を斫るわけにはいきません。
まず元請けへ連絡。
そしてオーナー側にも状況を説明しました。
伝えたのは、
・弊社の施工中に発生したこと
・共用廊下照明が点灯しなくなっていること
・壁内部の電線を損傷した可能性があること
・原因確認と復旧のため壁の一部を斫る必要があること
です。
状況を説明して、復旧作業の承諾をいただきました。
ここから壁内部を確認します。
ALC壁を斫ってみたら「なんでこんなところに?」

壁を斫って内部を確認。
すると、原因が見えました。
ALCの隙間部分にFケーブルが入っていました。
これを見たとき、
正直、
「なんでこんなところにあるのよ!?」
という感じでした。
自分自身、このような状態でFケーブルが入っているのを現場で見たのは初めてでした。
そして今回、その位置と穴あけ位置が重なってしまった。
結果としてドリルが電線を損傷し、共用廊下照明が使えなくなったという状況でした。
約1cmという浅い位置だった
もう一つ驚いたのが、その位置です。
作業メンバーから電話で、
「1cmくらいでショートした」
と聞いたときは、
「そんな浅いところに?」
と思いました。
ところが実際に開けてみると、本当に想定していなかった位置にケーブルがありました。
だから現場って、
開けてみないと分からないことがある。
長く現場をやっていても、こういうことがあります。
ウォールスキャナーを使っても電線を確認できなかった
そして今回、もう一つ気になったのがウォールスキャナーです。
穴あけ前には、きちんと壁内部を確認していました。
しかし、
今回の事前確認では電線の反応を確認できませんでした。
ここは誤解してほしくないのですが、
「ウォールスキャナーは意味がない」
という話ではありません。
壁内部を確認するための重要な道具なので、穴あけ前には当然使用します。
ただ今回の現場で実際に経験したのは、
「スキャナーで反応がなかった=絶対に何もない、とは限らない」
ということでした。
壁材や対象物の位置、施工状態などによって、確認が難しいケースも考えられます。
だからこそ測定機器を使いながらも、
「ここには絶対に何もない」
と決めつけて作業するのは危険だと改めて感じました。
壁の穴あけで電線を損傷した箇所を復旧
原因箇所を確認できたので、ここから復旧作業です。
損傷した部分を確認し、必要な処置を行います。
復旧後、電源を戻して確認。
先ほど点灯しなかった、
共用廊下照明も無事点灯しました。
そのほかの設備についても再度確認。
問題なく動作していることを確認しました。
これで電気設備側の復旧は完了です。
ただし、今日の仕事はこれで終わりではありません。
本来の仕事は、
各部屋へのLANケーブル新設工事。
こちらも残っています。
トラブル対応後、本来予定していたLAN工事も進め、
最終的にはすべて当日中に完了することができました。
正直、ホッとしました。
現場では今でも「ナニコレ?」がある
電気工事や電気通信工事を長くやっていると、本当にいろいろな施工を見ます。
それでも今だに、
「ナニコレ?」
というものに出会います。
図面では分からない。
外から見ても分からない。
測定機器を使っても分からない。
そして、
実際に壁を開けて初めて分かる。
今回もまさにそれでした。
既存建物では、過去に誰がどのような施工をしたのか分からないこともあります。
だから、
「いつもこうだから、今回も大丈夫」
という考え方が一番怖い。
同じようにケーブル関係でも、まったく予想していなかったトラブルは起こります。
以前の現場では、テレビが突然映らなくなった原因を調べていったところ、ネズミにアンテナケーブルをかじられていたこともありました。
詳しくはこちらの記事で紹介しています。
内部リンク先:テレビが突然映らない!原因はネズミにかじられたアンテナケーブルだった
本当に現場では、
「そこ!?」
というところに原因があることがあります。
トラブルが起きた後にも経験と技術が必要
今回はこちらの施工中に、壁の穴あけで電線を損傷させてしまった事例です。
そこは事実なので、
「結果的に直せたから良かった」
だけで終わらせてはいけません。
もちろん、
最初からトラブルを起こさないことが一番です。
事前確認をする。
図面があれば確認する。
測定機器を使用する。
想定される危険を考える。
それでも、既存建物を扱う現場では予想していなかったことが起きる場合があります。
そして実際に何かが起きたとき、
そこで止まってしまうわけにもいきません。
今回は一つずつ状況を整理した
今回の場合は、
電源がショートした
↓
現場へ戻る
↓
影響している設備を一つずつ確認
↓
共用廊下照明と判断
↓
元請け・オーナーへ状況説明
↓
承諾を得て壁内部を確認
↓
損傷箇所を特定
↓
復旧作業
↓
動作確認
↓
本来のLAN工事も完了
という流れで対応しました。
突然のトラブルが起きたときに、
「どうしよう」
で止まらず、
「まず何を確認するのか」
を考えられることが重要です。
その日のうちに直せない場合だってある
今回は幸い、その日のうちに復旧できました。
でも、
現場のトラブルが毎回その日のうちに解決できるとは限りません。
必要な部材がない。
特殊な設備だった。
交換部品を取り寄せる必要がある。
別業者の作業が必要になる。
いろいろなケースがあります。
だから、
「トラブルにも対応できます」
と簡単に言うより、
どこまで自分たちで判断できるのか。
どこから専門業者へ依頼するのか。
そして何を優先して復旧させるのか。
そういった判断も含めて、経験が必要なんだと思います。
まとめ|現場は何年やっても「想定外」がある
今回の現場は、
集合住宅で各部屋へLANケーブルを新設する工事でした。
既設配管が細くLANケーブルを追加できなかったため、ベランダ側から新規配管。
各部屋へ穴を開けてLANケーブルを入線していました。
ところが、
ALC壁へドリルを約1cm入れたところで電線を損傷。
共用廊下照明が使えなくなりました。
事前にウォールスキャナーを使用していましたが、今回の確認では反応を確認できませんでした。
壁を斫って確認すると、
想定していなかった位置にFケーブル。
損傷箇所を復旧し、共用廊下照明も復活。
本来予定していたLAN工事についても、すべて当日中に完了しました。
今回改めて思ったのは、
現場は何年やっても「ナニコレ?」がある
ということ。
そして、
測定機器を使ったから絶対大丈夫。
今までこうだったから今回も大丈夫。
とは限らない。
もちろん、トラブルを起こさないための事前確認が最優先です。
それでも何か起きてしまったときには、
状況を確認する力、原因を探す力、復旧する技術、そして関係者へきちんと説明する力。
全部必要になります。
無事に終わったから言えることですが、
今回も一つ、
現場で勉強させてもらいました。

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